●『新しい歴史教科書』について
「二冊の本」 新しい歴史教科書をつくる会」というのがあって、『新しい歴史教科書』を発行している。扶桑社の2001年版を我も持っており、夫れに色々謂いたいことがあるのだが、その前に『新しい歴史教科書の絶版を勧告する』(谷沢栄一著)と言う本があったので面白そうなので買ってみた。左翼系の批判本かと思いきや、存外ちゃんとした歴史研究者の様であるらしい。つまり『新しい歴史教科書』の右系思想を批判しているのではなく、実際の誤りを指摘している。確かに『新しい歴史教科書』を読んでいると所々?の箇所がある。そして『勧告本』の方が確かに正しいと思える部分が多い。ただ我の浅学の為にどちらが正しいのか不詳な部分もあり、またどちらでもよいのではと言う部分もあり、そしてまた逆に『勧告本』の明らかな間違いといえる部分もある。 パーセンテージで現すと『勧告本』の主張の50パーセントくらいは確かに仰る通りであり、『つくる会本』の方が明らかに間違っている部分がある。我の無知で判定できない部分、もしくは 「何方とも?」と思える部分が40パーセントくらい。そして残り10パーセントは『勧告本』の方が明らかに間違っている。 余り総ては書き切れないが、少しだけ解説する。 和時計の記述ははっきりいえば『つくる会』の著述が概ね正しく大体は妥当な解説である。『勧告本』の批判は的外れであり、全く勘違いしている。そもそも角山榮氏の著書を読んで和時計を理解しようと言うのがかなり無理である。和時計を含めた江戸期の科学技術史は我の専門分野であり、日本の誰よりも我が詳しいと言う自信がある。谷沢氏の解説は全く話に成らない程間違っている……が詳細説明は省略。本人から何故?と訊かれれば責任上対応して解説するが、この場では無駄な説明は省きたい。 ただ谷沢氏のトンチンカンな批判はともかく、実は『つくる会本』の時計の解説は別の部分に間違いある。それは「ホイヘンスが振子の変わりにテンプを発明した」という部分。振り子時計以前ににテンプそのものは存在しました。ホイヘンスが公案したのはテンプに付ける髭ゼンマイの部分です。「髭ゼンマイ付きのテンプを発明した」と言わないとこれは確かに間違いである。正直な所『つくる会本』は確かに細かい厳密にいえば間違いという部分が本当に多い。ただ少しかばってやれば、『つくる会本』のみならず、他の現行のこれまで教科書も皆しかりであるという事である。
『つくる会』の孔子の解説などは確かに我も少し?と感じた。その点を全く的確に谷沢氏は指摘されている。 その他多くの間違い指摘は大体は的確と思う……のだが、ただ仏教の末法思想の批判の部分で我も?の箇所があった。末法一万年後に釈迦が現れるという説明を谷沢氏はされているのだが、そんなキリストの再臨みたいな教えが仏教にあったかしらん? どの経典に書かれている事なのだろうか。我の認識ではその後、五十六億七千萬年後に弥勒仏が現れて現世を救うと言う話だった気がするのだが。ただそういわれると末法一万年の後、弥勒出現までどうするかと言う疑問が生じないでもない。 この様な部分は我にも判定がつかなかった。とりあえずネット検索したが、釈迦再臨の話しは今の所発見できなかったのだけれど。
「有り難い批判」 ともかく折角批判本をいただいたのであるから、確かな間違い指摘の部分は性急に改めて、つくる会の教科書をもっとよりよいものにして行く努力は怠るべきではないと思う。 それはともかく、『つくる会本』に我はそれらの単純な間違いとは全く違った立場で文句を謂いたいのである。 それは日本の武術文化の解説が皆無であると言うこと。武術を馬鹿にしているのか、それとも単に無知なだけなのか。武術など文化ではなく、載せる価値が最初からないと思っているのか……? 何故に伊勢守や石舟斎,柳生但馬、宮本武蔵、小田切一雲……等々を載せないのか。彼らを単なるチャンバラの名人くらいに思っているのだろうか。ずっと昔、ある大学教授に不満を述べたら、剣豪が如何に強くとも後世に遺す文化があるわけではないから……と言われた事がある。 全くとんでもない事である。インテリであるはずの大学教授がこんなトンチンカンな事をいっている……! 全く情けない。 世界の国々にもさまざまな民族武術が存在するが、日本の剣客たちのごとくに巨大なる精神文化を構築し、それが後世に残る業績として多くの文化財を作成してきたのだと言う事も知らないとは……。『影流目録』の中で「転論」を展開し、超絶的な武術文化を永禄年間に花開かせた上泉伊勢守。膨大なる剣術極意書や精神論書を遺した石舟斎や但馬守の業績。そして世界にも紹介されてブームにもなった『五輪書』を著述した宮本武蔵などの業績も知らないのだろうか。小田切一雲も剣術の超絶的なる思想書を遺しているし、そもそも日本武術の文化財の全体像はとてもとてもこれ所ではなく、万余の流儀武術を生み、世界最高の武術文化を育んできた。この世界に冠絶する日本古流武術を無知なままでそれでちゃんとした日本人といえるのか。この様な大文化財を誇らないで世界に何を喧伝するというのか! 我は学校教育に武道教育を入れろとかは逆に余り言いたくない。ある意味それは重要な事で、無価値とまでは言わないが、所詮子供に現代武道を教えても逆効果を生む可能性も感じ、諸手上げて首肯も出来きないのである。現代武道の本質は所詮はGHQ式ダミー武道の過ぎないのだから。 ただだから特に実技まで学校でやれとは我は言わない。だだ日本という国は、事武術においては正に天才国であり、世界最古にして世界無比なる超絶的なる古流武術文化を膨大に育み、それが古典の儘、現在でも伝承されてきているという、真に素晴らしい事実を教えて置くべきなのではなかろうか。 それがない『つくる会本』は正に反伝統の左偏向本と我は判定せざるを得ないのである。
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